いろいろな可能性をスケッチしながらデザインの方向性を考える


建築を勉強し始めた頃の図学の授業で「いろいろな可能性(できれば全部)をスケッチしながらデザインの方向性を考えて行くエスキスが大切」とならって、衝撃と反発を覚えました。

それまでは「解にたどり着く正しい問題の解き方のパターンを、いかに短時間で見つけるか?」という事しかしていなかったからです。

いろいろな可能性(できれば全部)をスケッチする労力、大変なのでできれば避けたいです。

なので「コンセプトは〇〇」とか言いながら、見えている(見たことのある)デザインパターンで進む事も多くありました。(懺悔)

設計の仕事では時々、大どんでん返しがあります。

コンセプトという錦の御旗を掲げてどんどん進んでいるうちに、発注者から全然別のボリューム設定や配置を指示されたりします。ガーンとなってそちらで検討してみると「むしろ良くなった」という場面もいくつもありました。

免疫細胞は、考えられる限りの種類がまず作られる


そのころ読んだ、免疫の本で胸腺(子牛ではris de veau)の働きについて読んで、エスキスとの類似に驚きました。

若い個体の胸腺は、異物を攻撃するための免疫細胞を、考えられる限りの種類(でたらめに)作って、自分の体と反応しないものを免疫細胞として残し、洗練された免疫系を獲得していく。

生命の進化も、遺伝子による個体の「違い」を、環境が「選択?」(後出し!)して、子孫を残す機会の多い個体の形質が残っていくという仕組みで起こる事を進化論は説明しています。

また大はやりだったウィルスの変異も、増殖・感染を繰り返すチャンスが多いほど、変異のなかからより生き延びる変異ウィルスが生まれてきやすい、という事を見せてくれました。

一人の人間の有限の時間の中では進む方向を全部試すわけにはいかない、という制約もある中、とっかかりからロジカルにデザイン展開をしてしまうきらいもあるのですが、ここにきてcomputational designというツールが大きく実用に近づいてきているように感じています。

「変数」の組合せの結果、デザインパターンの可能性を得る


いろいろな**「変数」に基づき**、デザインパターンが生成できるようなプログラム(algorithm)が書けるなら、それらの**「変数」の(無限の)組合せの結果として、いろいろなデザインパターンの可能性を得る**事が出来るようになってきています。

私はRevitと連動するGenerativeDesignというもので、いろいろなデザインパターンの生成に取り組んでいます。

ここでついつい有限時間の人間は、いろいろなデザインパターンの中に最適解を求めて、最適関数定義に走ったり、AIがおみくじを渡してくれるのを求めたりして、最適という錦の御旗を欲しがると思います。

でも、建築や環境作りが多様な関係者や価値観のを取り込みながら行われる現在、むしろ**「ダメそうに見える案」も含めて全部を並べて見て、その中から「方法性を話し合いながら発見して行く」**という取り組みが求められているようにも思うのです。

VolumeStudy-2

ロジックの使い方